【書評】世界史に興味を持つキッカケになれる本。歴史を一側面から切り取ること。〜「知っておきたい「酒」の世界史」(宮崎正勝著)〜

先日、バーに行ってみたときに、お酒の話が興味深かったので、Amazonで買ってみました。

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そもそも私が高校時代に、日本史・地理専攻をしてしまったために、世界史の知識の基礎が備わってません。

一応世界史の授業はあったのですが、受験科目ではないからとかなり適当に授業を受けていました。

今から思えば世界史もちゃんと勉強しておけば良かったなぁ、と後悔しているところです。

とはいえ、高校当時は海を渡ったことも本当に幼児の時しかなかった私には、世界の歴史など興味の抱きようもない訳で、これがもう少し世界に行っていたら違ったのかもしれません。

そんなつまらないイメージのあった世界史ですが、この本でいう「酒」のように、自分が興味あるところであれば、面白く感じてきて、関心が高まるなぁ、と思いました。

はじめに

この本では、世界にあるあらゆるお酒の、ルーツと酒文化の特徴について述べられています。

そういう意味では世界史をしっかり学習し、お酒も色々な国のを飲んだことのある人にとっては非常に面白い本だと思います。

他方で、私のような世界史もお酒も素人である場合、内容が深すぎてしっかりは理解できません。

それでも、歴史において酒は必須の要素であること、富裕層も庶民層も皆がそれぞれお酒を欲し、技術を生み出そうと必死になったこと、各国においてそれぞれの文化を生み出したことが学べます。

文化におけるお酒の重要性が学べるといいましょうか。お酒は飲み過ぎはダメだし、中毒もあるし、だったら飲まない方がいいんじゃないか、としばらく思ってきたのですが、私が思ったよりもお酒は古代からある飲み物でした。

お酒の分類

世界中にあるお酒を整理すると、

①酵母が糖分をアルコール発酵させた「醸造酒」

②醸造酒を蒸留してアルコール純度を高めた「蒸留酒」

③蒸留酒にハーブ、スパイスなどを混入させた「混成酒」

と3分類できるようです。

必ずしもこうした流れではないのですが、主には、

まずは偶然、醸造酒を発見し、酵母で人工的に再現する技術を身につけます。

そうすると、段々アルコール度数が物足りなくなってきて、蒸留で度数をあげる技術を身につけます。

さらに、味が物足りなくなってきたのか、そこにスパイスとかを足したりして、独自性を出したりしていく訳です。

このような創意工夫を色々して多様な酒文化が生まれてきた様子が分かります。かなり壮大なストーリーで、偶然が生み出した産物がここまてま進展するのか、、と不思議に思いました。

さらに、産業革命後の19世紀には、連続蒸留機が出現し、酒の大量生産が始まり、大規模生産がスタートします。

そして、20世紀以降は、複数の酒、ジュース、果物などを組み合わせるカクテルが成長し、酒文化のグローバル化が進んでいきます。

カクテルは酒文化のグローバル化なのか、と考えてみるだけでも、お酒の深さを感じることができました。

存在を誇示するために

総論としてお酒の広さ、深さについて紹介したのち、内容についても少し紹介していきます。

歴史的に興味深かった点は以下のところです。

「リキュールは時には薬用酒、時には媚薬として使われ、上流階級のファッショナブルな飲み物になった。」

「メディチ家といえども庶民は庶民である。存在を誇示するには、こうした贅沢が欠かせなかった。」(96ページ)

中世では貴族がひたすらリッチな生活を送りますが、お酒はリキュールを飲んだりしていたのか〜、とちょっとイメージが深まった気がしました。

国の代表酒を

近代になると、各国で国を代表する酒が出てくるようになります。

そんな中、後進であったアメリカで、バーボンが国民酒の地位を取るために打ったキャッチコピーがこれでした。

「フランス人にはブランデー、オランダ人にはジン、アイルランド人にはウイスキー、イギリス人には黒ビールがあるのに、どうしてわが国には国民酒がないのか?ー」(165ページ)

このキャッチコピー、今見ても色あせずカッコいいです。かつアメリカらしいですね。

こうしたキャッチコピー効果もあり、アメリカの国民酒といえばバーボンとなっていきますが、段々と世界でそれぞれの国がそれぞれの酒を愛飲するようになり、一瞬の国の誇りのようになる様子がかなり興味深いです。

食文化も色々な背景があるんだなぁ、とこれまた歴史の偶然の面白さに魅せられました。

ゴッホの人生を破滅に導いたお酒

ゴッホは終生は気がおかしくなってしまい、耳を切り落としたりした、という話は有名で、それは精神がおかしくなったと習っていたが、その原因がお酒にあるとは知らなかった。

「強い酒アブサンになじみやと、割る水の量が次第に減っていくことになる。ついつい、強い酒が常飲されるようになり、アルコール中毒が広がったのだ。」

「アブサンの常飲で、幻覚を覚えたり、錯乱する者が増え、普通の状態ではとても考えられないような犯罪が続出したのである。

「調査の結果、アブサンの主原料ニガヨモギに含まれる化学物質が人間の神経に有害で中毒症状を促進するという結論が出た。」(200ページ)

つい、ゴッホは天才だったから、そのツケが来たのかわからないが、気が急に狂い始めたのだと理解していた。

それは誤解で、アル中が原因なのだ。天才がいないことの証明ともなると思う。

いわゆる天才と呼ばれる人間で、最後に気が狂ったり自殺した人も多いが、その中には飲食物が影響した人も結構いるのではないか。

それは確かめようのない部分もあるが、天才なんていないことが分かるような話かな、と思ったし、何より自分がゴッホについて誤解していた知識を修正することができました。

おわりに

お酒という一側面から見ても、世界が色々見えてきます。

もはや完全にお酒からは離脱しますが、現代は複雑に事象が絡みあっているので難しい時代にはなっています。しかし、一つ一つの要素にしっかり因数分解すれば、物事が徐々にに理解できるようになってくるんだな、と感じた本でもありました。

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