思ったことを思ったまま伝えること。人が傷つくであろうことも躊躇なく言うこと。…そんなことを正々堂々とやり遂げる素直な高校生が主人公の作品です。「カッコいい生き方」を体現した作品でしょう。
あらすじ
高校1年生の鮎喰響は、ネットで提出する規定の新人賞に原稿で提出します。しかし、それは規定に反するためボツになる予定でした。それを、編集者の花井ふみがたまたま見つけます。
その作品の素晴らしさに惚れた花井ふみが提出し、響と連絡を取り、新人賞にノミネートし、とんとん拍子に響の才能が世間に認められていくというストーリーです。
他方で、響は本音がはっきり出るので、また、手が出るのも早いため、大人との衝突を繰り返していきます。
響の適性について
響は、周りから天才かのように見られ続けますが、本人の軸は全くブレません。
作品は月20〜30冊を読む、そして作者の作品毎に批評ができる。面白いものには興味を示し、くだらないものには酷評する。
面白かった作家が面白くない作品を書き続けた場合、苛立ちすら感じる。
基本的に小説を読んでいます。膨大なインプットとアウトプットをこなしている主人公です。
現に、作家への作品批評が作中に随所で出てきて、それは的確であるため、作家本人はその厳しい批評を認めざるを得ません。
批評シーンは面白かったので、もう少し響が作者陣に畳み掛けるシーンがあっていいんじゃないのかな、と思いました。
適性はあると思いますが、そんなことを当たり前のようにやること。そして周りから何を言われようと小説が好きだからそれを続けること。
小説が「好き」ということでここまで前に突き進める。「好き」の大切さを感じさせてくれる作品です。
響の他人への態度
響は友達を重視しており、友達が傷つくことを嫌います。
他方で、本人が失望したりして響と距離を置いたりしたとき、全く追いかけません。
高校の友人である凛夏が響の才能に嫉妬し、自身に失望しているとき、響は一回手は差し伸べますが、二度目はせず早々に諦めます。
そして、しばらく時間を置いて、凛夏から響に「作品を書く」と言ったときに、響から「お帰り」と言います。
響は友人・同士を大切にはしていますが、無理はしません。でも自分が出来ること、自分がしたいことはします。
優しいんだか厳しいんだかよく分からないですが、自分の軸で物事を全て考えています。
親友の凛夏が他者の目を気にし続けるのと対照的に描かれており、自分軸を持つこと、他人の目を見て万人ウケを狙うことに意味ないことを伝えているように感じます。
響の正義について
響はすぐに手が出る欠点がありますが、自分の主張を曲げません。
でもそれは相手の意見を聞かないことはありません。全く冗談が通じない、本当に正直な感情です。
それでも、会話には「私がしたいからする」と私が、ということが出ます。
ここまで芯を持ちながら、他人のために手を出し、自分で責任を取ろうともします。
自分の「好きなこと」を「好きにやる」様子が美しく描かれています。
おわりに
ストーリー自体は、ジェットコースター過ぎて「ちょっと良いことも悪いこともどっちもあり得ないな」と引いてしまう部分があります。
漫画原作なのでしょうがないのかもしれませんが、映画化で時間の枷があるため、リアリティは更に低くなっています。
それでも、鮎喰響という人の生きざまは心に染みつきます。
ありのままに生きる。自分のやりたいことをやる。
この2つのシンプルなことでさえ、やり続けるのは凄い衝突を生むこと。
それでも辞めず、正面突破する主人公の生きざまには強く心を揺さぶられます。
参考
映画公式サイトはこちら