映画「プーと大人になった僕」を見ました。
感動作品であるだろうなぁ、という感じが出ていて、少し宣伝が感動を前面に押し出していたので不安でしたが、かなり充実した時間を過ごすことが出来ました。
忙しいと感じているがために心を亡くしている主人公が変わっていって、幸せになる物語なのですが、変わる時にプーさんがアドバイザー役となって、主人公を助けていきます。
あらすじ
プーさんと一緒に幼少時代を過ごしたクリストファー・ロビンは、寄宿舎のある学校に進学した後、プーと会うことなく社会人となっていく。
多忙な生活を送りながらも結婚し、妻との間に娘も生まれた。
だが、大企業の鞄部門で働く彼は、戦後の不況により鞄の売れ行きの伸びが足りないと上層部から判断され、3%向上しかしていなかったのに、20%の売上をするための策を練ろと言われ、休日出勤をしながら頭を悩ませる。
そんな折、突然20年ぶりにプーと再会して…
というところからストーリーが始まっていく。プーと一緒にいる中で、彼が心を取り戻して、幸せを取り戻すストーリーでした。
字幕と吹き替えについて
今回は、時間帯の都合上、吹き替え版を見ました。しばらく字幕版を多く見ていたので、吹き替え版を見て、良いところと悪いところと両方見えてきました。
・吹き替え版はどうしても口の動きが違うのでどうしても気になる。
・とはいえ、頭の中で英語翻訳しなくてよいので、頭の容量に余裕があり、吹き替え版の方がストーリーに入り込みやすい。
・ジョークのパートとかニュアンスの部分は元言語だから成立しているところも大きい。吹き替え版は、「あ、ここはネタパートなんだな」と認識しながら鑑賞するイメージ。
・英語の勉強になるのはやっぱり字幕版。
と本作を見て思ったことを並べてみましたが、
・ストーリーをがっつり理解したいなら吹き替え版
・俳優自体やその声が好きな場合、あるいはストーリーの理解度は犠牲にしつつも英語リスニングの学習の一環として活用したい場合は字幕版
でしょうか。とはいえ、吹き替え版を見ていると字幕版を見たくなり、英語で理解したいなぁ、と思いますね。
他方で、作品を理解させるために翻訳家の方々が頑張っていることもあるので、どっちも興味深い点がそれぞれにあります。
プーさんの名言
本作では、いい大人(中年)になった主人公、クリストファー・ロビンに、プーが次々と名言を述べていきます。
大人になって、常識という名の制約を持った主人公に対して、子どもの心を持ったプーが従来通りのメッセージを伝え続けるのです。
私は原作はしっかり知らない状態で見たのですが、調べる限り、プーの発言はかつての「くまのプーさん」から変わりないようですね。ディズニー映画らしい構成で、とってもほっこりさせられますし、感動モノでした。
映画館で見ているため、100%セリフをそのまま書いている訳ではないですが、いくつか挙げますと、
・「何もしない」が何かを生み出す。
・僕は何もしないことをしている。
・「赤い風船」が幸せ。何か意味がある訳ではないが、何か幸せな気分になれる。
・(主人公)「僕は迷子になってしまった」(プー)「僕がいるじゃないか」
・君がいない人生なんて嫌だ。君のことが必要なんだ。
・「今日は何の日?」「今日だよ。僕の大好きな日だ。」
などがありました。
プーさんは、相棒のピグレットにもよく言いますが、友達に絶対の信頼を寄せ、困ると一緒に困り、「助けて欲しい」と躊躇いや恥ずかしさなくはっきり言います。
友人に絶対の信頼を寄せることなんて現実社会では難しいのではないでしょうか。この他にも、助けを恥ずかしさなく求めること、好奇心が全てに先立ち、人に対する迷惑は鑑みないことなど、子どもが大人になっていくにつれて失われていくものの大切さを分かりやすく、主人公とプーの対比の中で表現しています。
また、プーは「今を生きて」います。今を生きることの大切さは、ビジネス書を一冊見ればまず書いてありますが、ストーリーの中で感じると、心の動かされ方が違います。
ワークとライフについて
本作は、仕事と家庭の関係を描いており、主人公は嫌々ながら仕事を優先している様子を分かりやすく描いています。
「自分の頭では全て覚えられない。だからこの紙に書いてあること(及びそれを入れている鞄)が大切なんだ。」
今はPCが代替しているかもしれませんが、仕事道具が大切な理由を上記セリフが分かりやすく述べています。
よく仕事道具は大切じゃないよ、家族の方が大切だよ、という描写があり、何故か急に家族の方を重要視する作品があった気もしますが、本作では仕事道具が大切な理由も明らかにしています。そして仕事道具は要らないんだ、ということは誰も言っていません。
だからこそ、結果として、主人公はワークもライフもどちらも犠牲にはしていないところが本作の良い点です。
主人公は、リストラを含む現実的な解決策を1枚以外全て失いましたが、そこからヒントを得て、旅行カバンについて、富裕層向け製品から一般向け製品を生み出すアイデアを提案します。
だから、まずは旅行していきます、ということで本人が旅行に行くところで終わります。
ただ、よく考えると、確かに旅行には行き、そこには家族で楽しむためという理由もありますが、旅行向け鞄を生み出すニーズ探しの旅にもなる訳で、それは仕事にも繋がることになります。
ここから、ワークとライフはバランスを取るというよりはどちらも犠牲にしないこと、むしろ、ワークとライフの境目をあるかないか分からないような状態にすることが、「幸せに生きる」ということだというメッセージを受け取りました。
自分で自分を変える
主人公は、プーとの再会、プーからの刺激はありますが、結果として、自分で自分の姿を取り戻しています。
・「迷子だよ」とプーに悩みを打ち明けますが、プーの仲間たちに自分の存在を証明する(敵がいるふりという遊びをする)中で、かつての自分を取り戻していきます。
・娘は「自分の本」を読んで欲しかったが、主人公は「自分の選んだ本」を選んだために、娘が拒否反応をしたことに、プーのハプニングが原因でありつつも自分で気づきます。
といったように、プーと仲間は色々ハプニングは起こしますが、解決はしません。解決するのは主人公とその家族です。
だからこそ「自分を変えるのは自分しかいない」というメッセージが前面に押し出されているように見えてきます。
また、主人公は、「クリストファー・ロビンだ」と結構言います。
本当に、主人公が自分の名前をあんなに自分で言う映画は珍しいのではないでしょうか。
自分を確認して、自信を持って取り組むようになる様子、主体性を取り戻していく様子が描かれており、「君の人生の主役は君だ!」と伝えているように感じ、勇気づけられました。
おわりに
無邪気なプーさんの様子を見て、可愛らしく思うと同時に、好奇心の大切さを学びました。
純粋に「なに?」「なぜ?」と疑問に思い、質問して、解決していくのです。
好奇心をもっと高くもって、童心を取り戻すことが大切だなぁ、と思った作品でもありました。
さすがディズニー作品ですね。取り扱っている話題としてはスタンダードなのですが、かなり胸に突き刺さる作品でした。