【書評】不文律と考えられていた部分の明文化に挑んだ意欲作〜『職場が生きる人が育つ「経験学習」入門』(松尾睦著、ダイヤモンド社)〜

よく「経験から学べ」と言いますが、「じゃあどうやって学ぶんだよ」と問われると、それは「周りを観察して、体験して身につけていくものなんだよ!」というのが、これまでの体験から学ぶに対するイメージでした。

現に寿司屋職人さんとかそういう感じなのではないでしょうか。アドバイスしようがない分野ということです。

そのアドバイスのしようがない分野に、学術的観点から切り込み、一般化を試みたのが本作です。

↑付箋をつけ過ぎました。。

はじめに

本作のよいところは、「経験から学ぶ」というのがどういうことかについて、シンプルにまとめていることです。

その分、抽象的すぎる、という批判は起こりうるとは思うのですが、それでも、本作に書かれていることを頭に入れてから経験するのと、なんとなく経験していくことでは長い目で見ると大きな違いを生むように思います。

また、本書では偶然という事象についても認めています。それでも、偶然や幸運を掴む可能性を上げるようにするアプローチを取ることを推奨しています。こうした、事象を認めつつ、それでも現実にできることをするという提案もかなり現実的で私にとって学びになります。

なお、本書を一読した後に目次を読み直すと、かなり丁寧に目次が作りこまれていることが分かります。具体に行き過ぎ、今どこに行ったんだっけ?と迷子になっても、目次に戻ると言いたいことが分かってきます。

以下、内容に少し触れつつ述べていきます。

経験から学ぶということ

人の成長を決める要素の比率をご存知でしょうか。

本書によれば、

「成人における学びの70%は自分の仕事経験から、20%は他者の観察やアドバイスから、10%は本を読んだり研修を受けたりすることから得ている」

そうです。

ここから、「経験が大切であること」はもちろん、「他者からのアドバイスと、本などからの知識も必要ではあること」が読み取れます。

自分自身にスポットを当てると、10%側に使っている時間が25%くらいあるのと、20%側に使っているのが、15%くらいしかないのでもっと伸ばす必要があるのと、もっと経験から学ぶこと、というより経験することを重視した方がよいことを学びました。

…というように、費やす時間の比率が分かるので、自分を分析する際の指標にかなり便利だな、と思いました。

経験から学ぶための3つの力

力がシンプルに3つにまとめられているのですが、その3つとは

①ストレッチ…問題意識を持って、挑戦的で新規性のある課題に取り組む姿勢のこと

②リフレクション…行為の後に内省すること。行為の最中に内省することも含む。

③エンジョイメント…自分の取り組む仕事にやりがいや意義を見つける姿勢。

とのことでした。抽象的なのですが、かなりシンプルに真理めいたものに突っ込んでいるのではないでしょうか。

私は特に①ストレッチが興味深かったです。

本書ではこの3つの力について方略が述べられ、更に具体化されていくのですが、ストレッチのところの方略1は、「挑戦するための土台を作る」ことなのが、意外でした。

本書によれば、ストレッチ経験は周りから与えられるものなのです。目の前の仕事でしっかりと成果を出すことで、周りの人から信頼され、チャレンジングな仕事を与えて貰えるようになるのです。

だからこそ、大きなストレッチをかしるために、小さいストレッチを繰り返して土台を作っておくことが重要である、と本書は説きます。

土台を作って、信頼されること。

チャンスは周りから与えられるがその土台を構築することが自分でできることであり、それを淡々とこなすことが重要であることを知りました。言ってみれば分かるのだと思いますが、ストレッチの要素を知ることで、今できることをやることの大切さを学びました。

経験から学ぶ力の原動力

上記3つの力を得るための原動力が2つあると本書では主張しています。

この2つこそが「思い」と「繋がり」です。

思いは自分のことを大切にすると同時に、他者のことを大切にしながら仕事をする思いも含みます。

繋がりは、仕事の思いが成長にドライブするものであるのに対し、思いに影響を与えるのが他者との繋がりだと説きます。

ここで、「他者」という存在が出てきます。経験というと自分の成長を考えがちですが、他者の存在が確実に必要であることが述べられています。

思いのところで看護部長の例があり、「他の看護師が「他者」とは思えません。なぜなら、自分と看護師は一体化していますから」ということが述べられていました。

確かにこうした自分と他者への思いが統合されると、経験から学ぶ力は大きくなるな、と感覚的にも理解しました。

経験と言いつつ、結局は自分の思い、他者との繋がりが大切であるとなるところが本書の興味深いところでした。

おわりに

経験から学ぶに際しても、最後にシートの紹介があるように、書いて分析することが大切だと学びました。

結局、自分を知り、自分が好きなこと、深めたいことを経験し続けることで、成長していくことを学びました。

総じて学びの多い本で、内容紹介も一部しましたが、内容の濃い本なので、強くオススメしたい本の一つになりました。

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲