年末年始で時間があったので、何となしに、ジョブズのスタンフォード大スピーチを見た。
しばしば「伝説のスピーチ」などとも形容されている。正直、そう形容されると引いてしまう自分がいたが、見返してみると素晴らしいスピーチだった。
ジョブズへの親和性
社会人として生活していくと、本当に少しずつではあるが、客観的な自分の評価が見えてくる。
もちろん、ダメなところが先に目に入ってしまうし、未だに社会人1年生のときの記憶は怒られた記憶が第一に思い出される。
それでも、個人的には、学生時代に重視されがちな通称「学力」で馬鹿にされて辛かった過去があり、また、暗記もする理由が分からずひたすら困っていたが、社会人になると、色々なアプローチを講じることができることが分かってきた。
分かりやすいのが、コミュニケーションのプロだが、私はそれではなかった。だからこそ、始めの頃は怒られ続けた。実際、私が直属の上司だとしても、7個くらい下の後輩としての私は全然可愛くなかったと思う。
そうこうして自分の得意を分析する中で、スティーブ・ジョブズは、現代の有名人では、プログラマーとしての人や理数的才能が優れている人が多い中で、決して、プログラムスキルなどで突出している訳ではない点が惹かれた。
純粋な既存の物と物とを結びつけるアイデアと、プレゼンを始めとした広報の上手さなどが分かりやすく突出していると感じる。そして、シンプルであることなど美の側面も訴えるところが、心を打たれる。
スピーチの面白さ
スピーチを聞いてみると、スピーチ自体の工夫が聞こえる。
例えば、有名な台詞 ”Stay Hungry. Stay Foolish.” をスピーチの最後で決めるまで、同じ台詞を3回言っている。
それにより、この言葉は強く印象付くが、それだと少ししつこさを感じる。そんな中で、最後の言葉の前に、
And now, as you graduate to begin anew, I wish that for you.
という、よく見たらそんなに韻を踏んでいる訳ではないが、聞いてみると、anew とfor youが耳に心地良く響かせていたりしていて、細かいところも凄いなあ、と思わされる。
原文が良い
日本にいると、日本語を話しているだけで過ごせるし、正直、あまり不便に感じることはない。英語を話せることで、色々なことの幅は広がるというのは確かだと思うが、決して「生きられない」ということはない。
そんなことからも、これまでは、なんとなく英語を学んでおかないとなあ、と思っていたが、このスピーチは原文で理解することの重要性を教えてくれる。
このスピーチは、確かに何度か日本語訳版として見た記憶がある。ただ、日本語訳版だとどうしても感情が動かないのだ。実際、あまり内容を覚えていなかった。
しかし、今回は、たどたどしくも、テキストで読み、日本語訳も確認し、英語で聞き…を何度かしていると、意味が入るようになってきて、聞いていて心が動くようになった。
多分、海外の知見を得ること自体は、割と翻訳頼りでも何とかはなると思う。しかし、翻訳の文章だと、どうしても、そこに込められた感情の読み取りがどうしても浅くなってしまうと感じた。
もちろん、翻訳家さんが力を尽くしているのは理解できるが、どうしても、仲介があるがために意味が弱まるのだ。
英語のロジカルさ
そして、スピーチの内容は、本当にロジカルに語られていると思う。
日本語は、語順を入れ替えても成り立つし、非常にハイテキストな言語であるとは思う。しかし、だからこそ、「分かりやすく」という観点が抜けてしまいやすいし、実際何となくでも通じるので、なあなあになってしまう。
その点、ロジカルさを学ぶ視点は英語から学べるところが大きいな、と思った。
生の英語
生の英語を知るのも大事だと感じた。教材を使うと、「なるほどね!」と思うことはあるが、実際の活用が難しかったりする。
実際のネイティブの使い方を見ると、「あ、これを表現するのにこうやって使っているんだな」と知りたくなるな、と感じた。
例えば、
letとか自分で使うのが非常に難しいが、参考になる。
Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice.
“If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?”
仮定法のいわゆる鳥構文を用いるのなら、この文の方がはるかに気持ちが入るなあ、と思う。