書評「書くことについて」(スティーブン・キング著、田村義進訳)

物事を書くには何をすればいいのか、主に作家のタマゴ宛に書いているように思われるが、当然書くことは作家だけがしている訳ではないので、万人に当てはまる名著。

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この中の名言はいくつか知っていたのだが、自身や他の人を例にしているので、説得力も伴っている。

かつ、著者はこの作品を書いているときに大事故に遭っており、後段の章は事故後書いたものなので、作品への熱を読者にも感じさせる。

ただ、本作は訳者あとがきから読んだ方がよい。というのも、本作には目次がついていないのだ。「書くことについて」という帯ページがいくつかあって分からないが、訳者あとがきに目次とそれぞれの概説が書かれている。

私は、いつもあとがきは目を通してから本を読んでいたのであるが、今回前から純粋に読んでしまった。おかげで最初の方の自伝が冗長に感じた訳であるが、構成から分かれば最初の方をもっと楽しみながら読めたと思う。

やっぱり、「楽しい」という気持ちは一番大切なものだ、ということを痛感させられる。

事故の詳細を後半にかなり詳細に述べ、死の淵を彷徨った様子を示した後で、「私がものを書くのは自分が充たされるためである。」「私が書くのは悦びのためだ。純粋に楽しいからだ。楽しみですることは、永遠に続けることができる。」とある。

その前に、腰を痛めながらも書く様子を克明に描いていることもあり、この言葉の重みを否が応でも感じさせられるのである。

本書の総論はここあたりにして、各論についてもしっかり取り上げていきたい。

まずは、こちらは既に有名な言葉ではあるが、本書で書くことや人生観について名言が目白押しなので紹介する。

「作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。私の知る限り、そのかわりになるものはないし、近道もない。」

読んで書くことが重要であることは薄々わかるものの、これだけだ。と断言し、堂々と宣言するところがよい。読んで書く、それこそ言うは易し、行うは難しなのだが、そこは序説のところで彼自身のエピソードが書かれていて、そこから読んでいくとかなりの説得力を感じる。読む–書く。まだ私は初心者なので、その数を増やしたいな、という思いを強めた。

「本を読み、凡庸さやくだらなさを経験すれば、そういったものが自分の作品に忍びこもうとしたとき、すぐにそのことに気づき、それを排除することができるようになる。」

読むことについて、意味のないものはないよ、ということを伝えてくれている。読書には結構時間がかかるが、その時間は無駄ではないことを教えてくれる。

「読んだ本が秀作や傑作の類であれば、自分が書いたものがどのレベルにあるかを知り、これから何ができるかを推し量ることができる」

なるほど。「凄いな…」だけではなく、自分のレベルの推量に使えるのか、というのは発見であった。なお、この後に作風・文体は大いに真似よ、といった趣旨の記載もあり、その分の学びもあることは付言する必要がある。

「優れた作品〜を読んだ者は〜絶望と嫉妬心に駆られるにちがいない。けれども、そういった感情は、もっとがんばろう、もっと高みをめざそうという気持ちを後押ししてもくれる。」

凄すぎるものにあうと、言うもしれぬ感覚を味わうのはスティーブン・キングでもそうらしい。過去絶望感を味わったことはいくつかあったが、後押しもしてくれるから、そうしたものに触れるは意味のあることだ、という後押しをして貰った。

「本を読むには時間がいる。テレビは時間をとりすぎる。」

テレビ邪魔だ、という言葉もあった。本書ではこうした細かい留意点も比較的書かれているところがよい。

「楽しくなければ、やらないほうがいい。もっと才能があり、もっと楽しめる道に進んだほうがいい。」

「才能は練習の概念を変える。どんなことでも、自分に才能があるとわかると、ひとは指から血が出たり、目が飛び出しそうになるまで、それに没頭する。」

人間には適正があり、それは「楽しい」と「没頭」で決まる。そういえばホリエモンも「サルのようにハマれ」と言っていたのを思い出す。私は結構人の目を気にしていて、バランス感を重視しているんだ、とか自分で思い込んでいたが、それはあまり正しくないらしい。自分が楽しいことに没頭すればよい。これだけでも少し楽に思えてくる気がした。

次に、喜びと挫折を繰り返しながら生きてきたスティーブンの生き様に感銘を受けた。

最初の喜びは母が与えてくれたこと。印刷とか技術とかには関心がなく、映画に夢中になったりしたものの、人生においてずっと書き続けていたこと。「どうして才能を無駄にするのか。」とドリームキラーに言われ、しばらく引きずっていたこと。アルコール・薬物の依存者であったこと。

このように、エピソードを交え、色々な苦難と、ちょっとした喜びを噛み締めて、少しずつ前進する様子が赤裸々に書かれている。

本当に少しずつ前進し、ようやくヒットに至っている。何より喜びより苦難の方が深いと見えるのに、前を向き続けてきた姿勢を感じ、彼の作品を作ることへの情熱をひしひしと感じる。

最後に、細かい技術も教えてくれる。

一番感銘を受けたのは、「公式:二次稿=一次稿–10%」のところである。

冗長なものは徹底的に削除する。読者に想像させることを忘れない。そうすると、原稿は短くなる、という訳である。

また、副詞や受動態は使いすぎるな、というところもアドバイスとして受け取った。文法は書いていく中で身につけ、意識していくものなのだな、と理解した。

日本人の文法第一主義が批判されることが多いが、その理由が分かってきた。文法は初心者ではなく、中級者以上が特に意識すべき事項ではないか、と思う。

全体を通じて、氏の試行錯誤の過程が割としっかり書かれている。

「(頑張って)成功しました!」と書き、頑張った部分は自分なりに抽象化を図ったもので、それのみを書いているものが多く、しかもその方が格好はいい。

しかし、この泥臭い部分を本作では惜しげもなく見せている。その生き様がカッコいいな、と思った。

実は、ホラー系はあまり得意ではないため、氏の著作は読んだことはないのだが、人生の先輩から、重要な教訓を頂いた、そんな本であった。

↓読んでいたら、ページが取れるハプニングに見舞われれた。

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲

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