【書評】「最強!のニーチェ」(飲茶著)〜ニーチェの考えを、概念理解の正確性を失わない範囲で明快な説明がされた名著〜

ニーチェの考え方を表すキーワードである、「超人」「永劫回帰」「ニヒリズム」などは、聞いたことがある方もそれなりに多いと思います。

しかし、言葉自体を知っていても、「ではニーチェの考え方を教えて下さい」と言われると、難しいと思います。

社会という授業の中ではキーワードを知ることも大切なのかもしれませんが、実生活に活かす観点では「考え方」それ自体を理解することが大切です。

学問的な視座も失わず、分かりやすくニーチェの魅力を伝えている本がありましたので、所感を述べていきます。

万人にあてはまる真理なんてない

「スマートな体型であるのが良い」「20代のうちに結婚する方がいい」など、この世の中には色々な価値観があります。

しかし、こうした理念と現実の自分は異なりますし、それでいいのです。たとえ長年考えられてきたことであったとしても、それはあくまで「考え方」に過ぎません。

また、「運命の恋人」や「真実の愛」などの抽象的な概念も疑います。確かに、それを追い求めるべきというのも、あくまで1つの価値観に過ぎません。実際、「真実の愛」に思われるようなカップルに話を聞いてみると、その人なりの悩みがあることもしばしばあります。

本書では、

「価値や意味そのものが悪いのではなく、社会や他人から押し付けられた価値や意味を、無自覚に「そうでなくてはならないんだ」と思い込み、自分の人生を縛り付けることが問題」

との記載があります。

このようにして、ニーチェは慣習・道徳などを絶対的と考えられているものを悉く否定していくのですが、納得できるものであると同時に、清々しささえ感じます。

私自身、「価値観に囚われる必要はない」という考え方ではあるのですが、実際の世の中は価値観に溢れているので、想像以上に、「これは良いこと」と思い、「良くないこと」をしている自分を責めたりなどを無意識のうちにしています。

ですが、そんなことはしなくていいことを気づかせてくれます。

力への意志

ただし、このような形で、色々と否定しつつニーチェの考えを突き詰めると、絶望に至ります。

その絶望は、感じない人もいるのかもしれませんが、私自身も思春期のときに特にそれを感じていました。生きるのが辛いし、面倒くさいし、「生きる意味ってあるのか」なんてしばしば思っていたのです。

その、一度絶望した後で「力への意志」という言葉に出会います。

ニーチェの考え方を噛み砕くと、「より強く成長したい」という想いが人間にはデフォルトであるから大丈夫だと言うのです。

成長というから少し固いのかもしれませんが、「面白いことしたい!」と思ってノリでやっていくことが、人間に希望を与えてくれます。

子どもが鬼ごっこをすることに、意味はありません。ですが、彼らは「面白いこと」だと彼らが思っているから、キャッキャと言いながらやっているのです。

芸術こそ至上

「ノリ」という言葉でイメージを持つと、少し理解は進んで気はしますが、少し違和感も残ります。

そこで言葉の言い換えを考えていくと、生きる意味としての「芸術」に行きあたります。

私は、芸術の意味を、いわゆる絵とか写真などと狭義に捉えていたので、これまでピンとこなかったのですが、ここに言う芸術は広義で考えるもので、本書では、

「芸術って何かと言えば、自分にとって「よい、素晴らしい、美しい」と思うものを目指してそれを表現する行為のこと」

という言葉を見て、ハッとしました。

例えば、私は、芸術の素養を得てこなかったこともあり、パブロ・ピカソのキュビズムの絵の素晴らしさがピンときません。このように世間的に「素晴らしい」と言われているものを見ても、ピンと来ないことがしばしばあります。

ただ、ピカソの絵を見たときに、ピカソ自身が自身の「よい、素晴らしい、美しい」ものを追い求め、それを表現するために、情熱を注いでいることは分かりました。その意味での感動はありました。

J-popでも、私は、卒なく綺麗に歌っているよりも、自分の意思を込め、熱量を感じる歌声に強く惹かれます。

「芸術」は、自分に生きる意味を与えてくれる言葉だと思っています。

他者の価値観に振り回されるのではなく、あくまで自分が「凄い」と思ったことについて、突き詰めてみれば、それで人生は幸せだったのです。

思想を自分の根本にするには時間がかかる

著者は、ニーチェの考え方を紹介しつつ、このような記載も残しています。

「どんな名言、格言でもそうだけど、聞いた瞬間は何かがわかった気分に慣れても、そんな感覚は日が経つにつれてすぐに色あせ、いつもの日常に戻ってしまうんだ。」

こういうところもしっかり明記しているのも、ありがたいし、実際そうだな、と思いました。

「凄い」とか「感動したな」と思うことは時折ありますが、言葉に出会った感動を潜在意識下に入れ込み、行動を変えていくには繰り返さないと入っていきません。

言葉には力はありますが、それを繰り返し、経験を積み重ねていく中で、マインドが自分の中に入っていきます。

ハッとさせられる言葉です。

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この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

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