「新しい文章力の教室」(唐木元著)書評〜良い文書を書くための4つの視点〜

文章を「書く」ということ。

文章を読んで、「これは読みにくいなあ」などとは思いますが、自分が書いた文章は、なかなか自らでは読みやすさを知ることはできません。

そんな「文章を書く」ときの注意点が一通りまとまっている良書に出会いました。

「文章力の教室」といった類の著書は多くありますが、この本は少し切り口が類書と異なっているように私には感じました。

特にこの本は、ニュースサイトの「ナタリー」の方が、自身の研修経験を活かして書かれた本なので、「ネット上で読んでも読みやすい文書」という観点からのポイントが詳しくまとまっています。

文章術の類書と違うポイントはどこにあるのでしょうか。感銘を受けたところにフォーカスを当てて書評記事としています。

それでは、詳しくみていきましょう!!

1.良い文章の定義は、「完読される文章」である

良い文章とは何でしょうか。

「読んだ後に他の人に話したくなる文章」という方もいるでしょうし、読む習慣があまりない方は「分かりやすい文章」というかもしれませんし、難しい文章を読むのを好む方にとっては「読後感として、読み応えを感じる文章」となるかもしれません。

しかし、本書では一貫して「完読される文章」をゴールに置いています。これはシンプルですが、指摘を受けないと気づきにくい点でもあると思います。

ネットの出現以前においては、「完読」は目標としては低かったのかもしれません。しかし、ネットにより扱う情報量が天文学的になっている今、完読は簡単すぎるということは断じてなく、適正な目標として機能します。

本の中でもこのようにまとめています。

「こらえ性のない読み手に情報を不足なく手渡し、メッセージを伝えるために、私たちは文章力を磨かなければならないのです。」(15ページ)

「完読」を中心に据えて書いてみる、という意識を少し置くだけでも、文章の書き方は大きく変わってきます。

2.文章の完成度はロングテール

この本では、文章を階層構造で考えています。

「「事実」「ロジック」「言葉づかい」の3つのレイヤーは、取り返しのつかない順序で積み重なっています。」(18ページ)

個々の「事実」の上に、その事実を結びつけるロジックがあります。そして、それを読者に伝えるために、「言葉づかい」に配慮をします。

「取り返しのつかない順序」とあるように、如何にロジックがしっかりしていても、個々の事実が間違っていれば、それは当然駄文になります。

同様に、如何に言葉づかいが丁寧でも、「何を言っているのか分からない」状態なのであれば、それはロジックが破綻しているという意味で駄文となります。

だからこそ、この3つの要素が重要になります。その上で、大切なことが「完成度はロングテールである」ということです。

「言葉づかい」のところで気をつけることは圧倒的に多いです。例えば、断定調と丁寧な表現とが混じっていてはいけませんし、修飾語は多すぎるとどこを修飾しているかが分かりにくくなってしまいます。

他方で、「ロジック」、「事実」のところで気をつけることはあまり多くありません。文章を書くときはテーマを決め、何をどこからどのくらい話すのかという分量を決め、文章を書く前に骨子を作成し…などと複数ありますが、「言葉づかい」の注意点に比べると、1個1個のポイントが大きくなりますし、数もこちらの方が少ないです。

しかし、重要性となると逆転します。「ロジック」「事実」が文章の良さの70%を決めるそうです。そして、残りの30%が「言葉づかい」のところ、推敲作業になります。

この大まかな構造を理解していれば、要点が分かるので、力を入れるところと適宜対応するところの分別がついてきます。

仕事は、「2:8の法則」で、「2割の仕事が成果の8割を占める」とよく言われますが、文章についても似たようなことが起きているのです。

3.文章のクオリティを高める作業:「推敲」

その上で、まずは、事実関係の確認とロジックの積み立てを意識するのですが、それが終わってから推敲の色々なスキルを駆使していきます。

推敲の紹介は色々な種類がありましたが、印象に残った2つを紹介します。

(1)文構造の把握

日本語の勉強でも国語の時間に多少学びはしますが、英語の勉強の際に、S、Vなどと文構造を把握する時間があったかと思います。

そして、この文構造の把握のところは、試験に出る以外にどこで使うんだ、と私は思っていました。しかし、構造把握スキルが高いということは、推敲のときに多いに役立つことを本書を読んで発見しました。

具体的には、

・主語と述語が離れすぎていて、他の文解釈があり得ることを発見し、修文する

・修飾語が多すぎて、文のメインメッセージが見えなくなっていることに気づき、修文する

といったことは、文の解釈能力を駆使してやっていくということになります。

文構造の把握の意味を見出せずに学習してきたのですが、これは作文のときに重要であったことが分かりました。

母語はまだしも、外国語については文構造解析も必要ではあるんだな、と認識を強めました。

(2)数字の活用は諸刃の剣

文章の中で、数字はかなりの説得力を与えますし、分かりやすい文にするための重要な要素の1つです。

しかし、著者は、数字の活用は、「しっかり注意して使おう」、と警鐘を鳴らしています。それは、ミスが多いのも事実であることを認識して使用していくことが必要だというところです。

調査結果の数値の報告はデータ引用に誤りがなければいいのですが、特に、○回目とか、○日ぶりなどは情報が更新されていくタイプの数字なので、誤りが生じやすいです。

文章に数字が多いと、その分、裏付けも大変になるので、使いどころには注意が必要な点をもっと意識したいと思っています。

4.読んでもらう工夫

「より良い文章を作るため」の小技リストも紹介されていました。

もちろん、本の中にはこれ以外にも紹介されていますが、「なるほど」と特に得心した2つを紹介します。

(1)感動の表現方法

この手法のところは、「なるほど、こういうやり方もあるのか、、、」と唸らされました。

「自分の感動を表現するのではなく、読者が感動を読み取れるように書くべきです。」(174ページ)

例で考えると分かりやすいのですが、例えば、セミナーで講演を聞いて感動した場合には、「すごかった」「感動した」などと書いてしまうのですが、それを止めるとのことでした。

読者を置いてけぼりにして感動するのではなく、文を読んで読者に盛り上がっていただくようにするということです。

上のセミナーの例でいえば、「500人のホールが満員に埋まった中で開かれた」「質疑応答の30分では、参加者の挙手が止まず、やむなく司会の方が終了させた」などという形で、客観情報でもって感動を伝える、というやり方です。

これは文章の性質によっては主観を出してもいいものはあるとは思いますが、別に感情を示さなくても、客観的な情報さえ伝えれば、読者の気持ちを動かせる文は十分に書ける可能性があるということは、しっかり覚えておくべき事柄だと思います。

(2)インタビューのポイント

これは、ワンポイントアドバイス的な記載にはなりますが、インタビューの際は、徹底的に準備していけ、という記載があります。

しかし、準備はしろ、とはいいますが、想定外が来ることはむしろいいことであると、著者は主張しています。

このところが裏切りがあって、興味深かったです。

「事前にストーリーや質問事項を想定しておくことは大事な必須のプロセスだと思っています。(中略)緻密に組み上げたストーリーが想定外の話題で壊されたとき、そのインタビューはたいてい成功しています。」(189ページ)

準備したときほど、「イレギュラーがあるといけない」と思い込んでしまいます。

しかし、実際には、準備をした上で、イレギュラー(想定外)があるほどいいということでした。確かに言われてみればそうで、準備したときの想定外は、「思わぬ話が聞けた」ということで、収穫の大きい回になることが多かったことを思い出しました。

自身の反省点として、具体的な経験をまだまだ上手く抽象概念に昇華できていないな、と感じます。

編集後記

「2.文章の完成度はロングテール」という話をさせていただきましたが、実際に本書自体が、第1章が、構成とかそういった部分であり、第2〜5章にかけて、ロジックの部分にも言及がありつつ、推敲や言葉づかいの話が多くなります。

文章力の本なので特に、この本自体が読みやすいように工夫されている印象を強く持ちます。本書の構成を読むだけでも、全体像がわかってくるな、と思う本でした。

本はこちら

書評記事は他にもたくさん!もう1記事いかがですか?

https://akky3.com/archives/2693

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新の情報をお届けします