「ムダゼロ・ミスゼロのための伝え方のキホン」(山口拓朗著)【書評】〜「伝えたい」けど「伝わらない」人に〜

話して、物事を「伝える」。

話す行為自体は、書くことに先んじて行われるので、当たり前のようにやっていることが多いと思います。

しかし、行為をすること自体は簡単に見えても、「相手に伝える」となると、その行為は容易ではありません。

とはいえ、話すことは出来るので、「自分の話し方のどこがまずかったのか」は意識的に考えないと、全く変わらずにあっという間に何年も経ってしまいます。

それに警鐘を鳴らし、自分の「伝え方」を再考させるきっかけとなる本が、この山口さんの「伝え方のキホン」本です。

はじめに

この本は、「伝え方」の基礎について網羅的に記載した本です。

基礎の「キ」から丁寧に書かれた本で、他方で、本の中では全40コラムあるので、「これはあまり出来てないな」と言う部分があると思います。

発見は大なり小なりですが、課題が浮き彫りになる本です。気づきとなる点も人によって大きく異なります。

例えば、伝え下手の人への助言として、「伝える以前に情報が不足している人がいる。しっかり情報を集めよう」というアドバイスがありますが、私は情報を最初に集めて行動する派なので、その点は私にとってはあまり問題になりません。

しかし、特に自分の頭で考えるのを得意とする人は、そのエビデンス集めが実は不足していたことが原因であり、その記載が響く言葉となるかもしれません。

このようにして、ここでは私の観点からいくつか取り上げますが、人によって異なる気づきがある本といえるでしょう。

ピンチの対応

まずは、「確かに」と納得した点を紹介します。このような記載があります。

「仕事にミスやトラブルは付き物。だからこそ、ピンチに見舞われた時に、どのような対応ができるかで、その人の真価が問われます。」(57ページ)

機械のようにノーミスでやりたいですが、人間のやることなので、ミスやトラブルは付き物です。なので、嫌なのですが、こうした時にしっかり対応することが大切になります。

ピンチの時の原則は、事実をありのままに報告することと、初動対応が大切です。よくやる例として、長々と謝罪の弁を述べてしまいますが、これは意味がないし、時間の無駄です。

まあ、分かっていてもやってしまうことが多いので、不正に関する報道は昔も今も絶えない訳ではありますが、「即時」「報告」「初動」と意識しているだけでも、最善手に大きく近づいて行きます。

相手の反応をチェックする

話が伝わったかどうか判断する基準は、「相手の反応」にあります。「話す」ので自分を主体としがちなのですが、「相手方」に意識を向けることが大切です。本には、

「あなたの話が伝わっていない場合、相手は何かしらのサインを発してきます。」(31ページ)

とありますが、これは本当に大切で、鈍感な人はこのサインに気づかない、ともあります。「鈍感な人」とありますが、誰でも「鈍感な人」になりうるというのが社会人の難しいところです。

というのも、

「大人になると、若い頃のようにまわりが注意してくれなくなります。その結果…いつの間にか人が離れていってしまう…多くの人が潮を引くように去って…初めて「あれ?自分の何が悪かったんだろう?」と振り返る」(36ページ)

このような現象があり、注意されないので、自分でしっかり反省しないと変わらないのです。

こう考えると、口うるさく注意していた学校の先生や、親は実はありがたい存在だったということになります。とはいえ、このありがたさはなくなって何か大変な思いをしないと真の意味で実感できないのは難しいところです。

そして、相手の反応に違和感を覚えた時は、「何か不明点はありますか?」などと言葉で確認するのが鉄則であるそうです。あるいは表情・仕草に出ていることもあるので、いずれにせよよく観察することが大切であるそうです。

物事は、「伝える」でなく「伝わる」(25ページ)が大切ともありますが、まさにその通りで、「相手本位」で考えよう、ということで、万人が注意すべき点だと思います。

行き違いの原因

やりとりをしていると、よく話し手と受け手の間に「誤解」が生じますが、その原因は何でしょうか。

色々な要因はあるとは思いますが、最大の原因は「曖昧さ」というのがこの本のスタンスです。私も全面的に同意します。

「曖昧さ」を排するためのアドバイスがこちら。

・伝え方がうまい人は、話が具体的

・ポイントは、意識的に「数字」や「固有名詞」を使うこと

・「自分が知っていることは相手も知っているだろう」と思い込まないことが重要

「数字」「固有名詞」等による具体化は大切なのですが、上司から部下への指示こそ、上司の方が知識量が多いだけに、抽象的になりがちで、そこからミスコミが生じていきます。逆の動きで、部下から上司への報告も、具体的な話でない場合が散見されます。

これも、「なかなか気づかない」のですが、気づかないだけに、社会人ほど、「フィードバック」を積極的に求めていくことが大切だな、という気づきにも繋がりました。

「この人みたいになりたい」

妙なプライドとかが邪魔して素直に出来なくなりがちなのが、この部分です。

「自分よりデキる人に出会うことは、成長するうえで運のいいことですし、貴重な経験です。」(39ページ)

こうした思いを抱けるようになればいいし、「手本がいる」と考え、「盗んで、真似ていこう」と純粋に・素直に思えれば、加速度的に成長していきます。

しかし、実際は、デキる人の足を引っ張る方法を考えたり、疎ましく感じてしまうことも多いと思います。だからこそ、素直であることは大人になるほど大切であり、「自分の出来なさ」を嘆くのではなく、手本が近くにいることに感謝するようになることが大切です。

ただ、これは特に言葉にするのは簡単なのですが、実践するのは難しいことの一つだと思います。

おわりに

著者が言うには、この本は特に社会人なりたての人に渡したい本であるそうです。

確かに、学生と社会人の「コミュニケーション」の意味合いは一気に変わるので、これを事前に知っておくと成長が早いし、ミスコミを事前に防止できるかもしれません。

ただ、実際にトライ&エラーで体験した方が、「これはダメなんだ」ということが体感的に分かるので、身に染みて分かると思います。

そこで、本書は、上司が部下とミスコミがあり、部下がミスコミをしたと言う場合に、その原因を言わず、この本をスッと渡すと、理論と実際が繋がり、いい学びになると思いました。

あるいは、上司の立場になると、イチイチ話すのが面倒になりがちですが、それを戒めるために基礎から学びなおそう、と思った時に読むとこれもまたベストタイミングです。

特に「伝え方」はどうしても実践が必要であることから、この本は読みながら具体的シーンがイメージできればできる程、学びの効率の高い本だと思います。

本はこちら

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲