ザ・ワーク−人生を変える4つの質問−(バイロン・ケイティ著)【書評】〜「生き方のコンパス」を与えてくれる本〜

「「悟りを開いた人」が心について述べた本。」

これがこの本を紹介された時に言われたことです。

ケイティさんの存在は知りませんでしたが、ケイティさんの公開セッションのやりとりメモを見ると、凄さは一目瞭然です。一見複雑に見える心の仕組みは、実はとてもシンプルであることが分かる本です。

はじめに

「人間の感じるストレスは10割が人間関係に起因する。」

としばしば言われています。これはアドラー心理学的考えに則りましたが、割合はあるにせよ、人間関係のストレスに寄与する割合はかなり高いのは、体感的に言っても、事実といっていいレベルにあると思います。

そして、ストレスを起こす原因として、不安、嫉妬心、怒り、猜疑心など色々あります。しかし、よく考えると、動物にも喧嘩はありますし、身体的ストレスを慢性的に受けると衰弱しますが、精神的に参るとか、自殺とかいう問題はあまり耳にしないと思います。

それだけ、人間における精神の部分の寄与が大きい訳であり、それは「人間が理性を持ったから」つまり、「考える」ことが出来るようになったことに起因していると思います。

この本には、「考える」ことから逃れられない人間の、負の面にも目を向けつつ、うまく人間の「考える」ことと共生し、生きていくための術を教えてくれる本です。

紙に書き出すこと

本に紹介されている「4つの質問」は単純なもので、日本でいうと、心屋仁之助さんのアプローチも類似の手法を使っていると思うものです。

徹底的に、「これは本当か?」を考えていくと共に、「考えを持った時に感じること」を想起していくというものです。その際、元の言葉の言い換えとかもしていくのですが、快か不快かを考えます。自分の中で、受け入れられるか否かを考えていくということです。

しかし、このワークをするに際しては、「紙に書き出すこと」が重要とケイティは言います。

「心の声を紙に書き出してください。どんなに頑張っても、頭の中のストーリーを止めることはできませんが、苦しみやフラストレーション、怒り、悲しみなど、心が語るありのままを書き出すことにより、自分の内側で渦巻いているものを見つめることができます。文字で表されることによって、具体的になるのです。そして最終的には、実際のワークにおいて、自分の内側で起きていることを理解するプロセスが始まります。」(50ー51ページ)

人間は四六時中、しかも無意識でも考えている動物です。そうであるからこそ、よく脱線して考える生き物とも言えます。だからこそ、「深めて」考えることが大切であるというメッセージと受け取っています。

私自身も、昨年から日記を書き始めて、自分を見つめ直す時間を確保することで、ストレスの絶対量が減ったような気がしています。

実は、文字化というのは大切ではあるのですが、「でも、これは別に書かなくても頭の中でも出来るんじゃないか?」と疑っている自分もいました。なおかつ、書くというのはどうしても時間がかかってしまうのも、「非効率ではないか?」と思う自分もいました。

しかし、この本の事例を見ていくと一番目を引くのが、相談者が「でも…」というと、ケイティが話を遮ることです。それくらい、人間の心は、染み付いた考えに戻る力が強いということだと思います。

だからこそ、自分で自分をしっかり探求することが必要です。

3つの領域

ケイティの手法は人に限らず使える手法ではありますが、主要な用途として使う場合の事例が本書では丁寧めに記載されています。

特に対人関係において理解しておくべき概念が、この「3つの領域」の話です。

「私が発見したのは宇宙にはたった三つの領域−私の領域、あなたの領域、神の領域−しかないということです。「神」という言葉を、「自然」あるいは「現実」と置き換えてもいいでしょう。」(199ページ)

つまり、対人関係について言えば、不安や怒りと言った心の動きへの対処の方法は、「そこは他人の領域だから、自分の領域のことをせよ」ということになります。

よく「過去と他人はコントロールできない」とは言いますが、人間は不都合なことは事実を歪めて理解使用とする性質もあるので、実際にはなかなかこのことを理解しても、その通りに動くことはなかなかできません。

そうではなくて、「領域」で考えれば、ストレスは感じなくなってきます。本文の中の事例の1つで、私が最も印象に残ったワードはここでした。

「娘さんは薬物に依存していて、あなたは頭の中で彼女の人生を管理することに依存しているの。つまり、あなたの薬物は、娘さんなんです」(279ページ)

これは薬物依存の娘に薬物を辞めさせたい母親の例で、ケイティが助言したことの一ですが、頭の中の世界と、現実の世界が異なるところにいると、負の感情を感じてしまいます。現実と頭で戦おうとしても敗れるのです。

だからこそ現実と戦うのを辞め、現実を愛そうというのがケイティの論ですが、私も、「自分に正直であること」が今年の抱負の一なので、自分に正直でありたい、と思わせて、勇気付けてくれます。

「考える」ことの負の側面

考える、というのは、人間にしか基本的にはできないことであり、そういう意味で、文字を扱えることと同じように人間の正の側面として語られることが多いと思います。

しかし、負の側面からもしっかり眺めて考えるべきだと、警鐘を鳴らします。

「考えというものは、信じさえしなければ無害です。苦しみの原因となるのは、考えそのものではなく、考えに対する執着です。考えに執着するというのは、それについて探求することなく、思い込んでしまうことを意味します。」(36ページ)

現代は、ネット社会になり、情報の洪水となっており、特に、「考えない」時代に突入しています。言い換えると、考えることはでき、その材料はあるが、別に考えなくても生きていける社会に突入しているということです。

長い間執着してきた考えのことを「ビリーフ」というということですが、私にも多くの「ビリーフ」が確実に眠っています。起こった感情を理解することが大切です。

とはいえ、「ビリーフ」については特に、潜在意識のところで眠ってしまっているので、カウンセラー等の助力を貰った方がいいそうです。

立花さんも先日のB塾で、「自分には誕生日祝われたいビリーフがあった」とおっしゃっていましたが、確かに、知人の誕生日祝われたイベントを見てなんか心がざわつく原因が、実はこのビリーフにあったというのは、なかなか気づきにくいと思います。

自分の心については知りたいな、と漠然と思っていたのですが、その理解のやり方を把握できたという意味では、小さいけれど、自分にとっては大きな一歩を踏み出したのかな、と思いました。

おわりに

本を見返した時、この言葉が目を引きました。

「自分自身、そして自分の感情をはっきりと理解すればするほどありのままの現実を愛するようになる。」(byスピノザ、1ページ)

自分を理解することが何より大切です。本著者のケイティさんは、読んでいると信じられませんが、そもそもは精神病棟の入院するほどの精神的に病んでいた人だったそうです。

人生は「始めよう」と思った時に、新しいスタートを切れるんだ、と勇気づけてくれます。

本はこちら

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲

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