こんにちは!
相羽涼太(@ryotaaiba)です。
突然ですが、「勉強」とは何でしょうか。
学校的に考えると、小中高と、強制的に学ばされてきたものです。高校は義務教育ではありませんが、私にとっては強制感のかなり強いものでした。学生の能力を測る基準として、運動能力と同様に重視されるものです。運動能力よりも客観的に比較しやすいので、学生にとっての評価基準として機能しています。
しかし、社会人になると、コミュニケーション能力に代表される、いわゆる「社会人基礎力」のような新しい能力も必要になってきます。
「勉強」の「強」の字が強制感を感じるので、「勉強」という言葉はあまり好きな表現ではないのですが、他方で、学んでいくこと自体は一生必要です。
そんな、必要性を感じつつも、(私にとっては)幼い頃にはあまり良いイメージのなかった「勉強」とは何でしょうか。
この本は、専攻分野に哲学を含む著者が考える勉強論です。結果的に対子どもにも資する話であるとは思いますが、基本的には、大学での学びやそれ以降の「大人の勉強」向けの話として考えると理解しやすいと思います。
はじめに
この本は、疑問を持ち、学んでいくに際して必要な心構えが網羅的に書いてあります。哲学者らしく、考えさせられる本ではあるのですが、方向性を考えるというか、物事を考えるキッカケとして有用な本だと考えます。
この本自体は、230ページほどの本で、そこまで量が多いものではないのですが、かなり論理的に考えて書かれているので、かなり重厚感があるように感じる本です。
ここから内容を紹介していきます。
勉強するとはどういうことか
まず最初に、学習の総論部分として、勉強するとどうなっていくかについて述べられています。この本に一貫して言えますが、一見分かりにくいのですが、よく考えてみると、なるほどね、、と思えてくる記載です。曰く、
「いままでに比べてノリが悪くなってしまう段階を通って、「新しいノリ」に変身するという、時間がかかる「深い」勉強の方法です。」(13ページ)
ということです。ノリが悪くなり、一旦周りから浮く段階を経て、新しいノリに変身することが勉強である、ということでした。
実感することとしては、中学から高校、高校から大学といった進学時に分かりやすいですが、特に集団全体のレベルが違うところに行った場合が、新しいノリに変身した後の場ということかと思います。
そして、勉強のプロセスを、筋トレに例えた記載があります。
「勉強においてもいったん、知性と同時にキモさがついてきてしまう「増量期」を経て、その後、キモさを減らす「減量期」に入る。」(66ページ)
人間は一つのことしか出来ないので、筋トレにおいても、脂肪も増えるが筋肉も格段に増える増量期を経て、脂肪を減らし、筋肉の減衰量をなるべく抑えて作りあげていく減量期を経て完成されるのが、完璧なボディメイク術です。
これがそもそもの勉強のプロセスで、これは前提なので、ここから話を展開していきます。
現代におけるキーワード「有限化」
現代は、インターネットも発達し、勉強しやすい時代であると言えます。しかし、その弊害として、このことも言えます。
「情報が多すぎることで、考える余裕が奪われている。」
「いま、立ち止まって考えることが、難しい。」(同書 10ページ)
これはネット時代の負の側面として私が強く強く感じていることです。選択肢がどう考えても多すぎ、浅い勉強から深い勉強に行けません。
資格試験の勉強を考えれば分かりやすいでしょう。今は、特に有名資格であるほどそうですが、色々な問題集が色々な会社から出ています。そうした際、少なくない受験生は不安なので色々なものに手を出してしまいます。そうなると、学びが身についていないのに、色々なところに手を出しているので、学んだことが身につきません。その正解は、「まずは1つの問題集に集中して、やり尽くす」なのですが、「色々手を出して失敗する」パターンは、ネット登場以降、急増していると思います。
他のことでも何でも、今は、「情報洪水」と言いますか、本当にしっかり自分軸を持たないと、情報の海に流され、楽しくない受動的な人生を送ることになってしまいます。
このことは割と普段から考えてはいたのですが、「立ち止まって考えることが難しい」という表現は言い得て妙といいますか、自分が言いたいことをまとめた表現だな、と思いました。
前置きが少し長くなりましたが、そんな情報過多の現代において大切なキーワードが、「有限化」であると本書では説いています。
「ある限られた=有限な範囲で、立ち止まって考える。(中略)「ひとまずこれを勉強した」と言える経験を成り立たせる。勉強を有限化する。」(11ページ)
自分なりに範囲を区切ることこそ、現代においては必要だ、ということです。
ちょっと分かりにくいと思うので、結論を先取りすると、「中断も是とし、自分の勉強の進捗を把握すること」が大切だ、というのが本書の主張と理解しています。
そして、個人的な解釈も足せば、現代は、複数の柱で勝負していく時代なので、勉強は一旦中断しても、そこから再開できるようにしておけば問題はない。中断を駆使して、複数の柱で生き抜いて行こう、というメッセージも伝えたいのかな、と少し考えました。
ツッコミとボケ
勉強を「深める」という際に、重要になってくる概念が、「ツッコミ」と「ボケ」です。本書における定義は以下の通りです。
・ツッコミとは、周りが当然のように言っている話に対し、「そうじゃないだろ」と否定を向けること。
・ボケとは、一人だけ急に「ズレた発言」をすること。 (同書 70ページ)
ここの記載は結構難解だったのですが、私の理解を述べていきます。
ツッコミについては、より深く論点を掘り起こす効果はあるものの、終わりがないというのが最大の欠点です。ツッコミを入れれば入れるほど、本質的な問に近づくものの、その最終形は、例えば、「愛とは何か」「正義とは何か」というように、絶対解のないものになってきます。
ボケについては、論理を拡張する働きがあります。これ自体はいいのですが、無意識に行き過ぎが起こるというのが問題点です。行き過ぎとは、「拡張しすぎ」と「縮小しすぎ」という問題があります。縮小の例は、出身地の話をしている途中で、数名で地元トークに話が咲いてしまう例がわかりやすいですが、この例においては、ボケによって、転換に、ついてこれる人は良いですが、分からない人を完全に置いていっているという負の側面もあります。
ここから言えることは、「深める」手段は2つあるのを意識することが大切であることと共に、この2つの手段には際限がないことから、自分の手で有限化する必要があるということです。
ツッコミもボケも行き過ぎないように有限化することが大切で、それを得る過程が先の減量期にあたると理解しています。
具体的な勉強法
ここまでが理念理解で、具体的な話も本書には含まれています。
ここで具体の勉強法の記載になりますが、至ってスタンダードです。
紹介されているのは、例えば、
・「複数の入門書→教科書→基本書」の順で勉強すること。教科書は最初のうちは目次を眺めたり、辞書的に調べたりするのに使っていくことがポイント。
・読書ノートをつけること。
→出典を書き、自分の知識と本の知識が繋げられるようにする。後から見返せる形にして残す。
・普段から書くことを思考のプロセスに組み込むこと。
勉強の広げると深めるを意識し、進めるやり方を述べた後に、記録を残すこと、考えることの大切さを説いています。
考えることの大切さを本書は一貫として述べています。
勉強の中断も是とする
結論を先取りしてしまいましたが、中断することを認めよう、というのが本書のメインな主張の一つです。
「勉強はいつでも始められるし、いつ中断してもよい」
「勉強は変身です。だから、変身はいつでも始められる。そして、いつ中断してもいい」(同書 234ページ)
とあります。中断して、また再開してを繰り返していくのが「生涯にわたる勉強」の中身なのかもしれません。
おわりに
なるべく本書の内容の要点を伝えるように試みたつもりでしたが、かなり難しかったです。
哲学的で論理的な本です。本を読むと著者の言いたいことがより分かってくると思います。
ただ、一般的で分かりやすいことも言っており、
「「深い」勉強は、ちょっとした調べ物から始まります。」 (同書 235ページ)
とあります。「考える習慣を持つ」ことを意識した生活をしないとすぐ流されていまうことは、本書の中でも分かりやすい教訓だと思います。
何より本書の理解をするのに色々考えました。