【書評】アブダクション(米盛裕二著)

論理的な文章であり、いかにも専門書、といわんばかりの文章でありました。

他方で、非常に論理的な文章なので、定義からきっちりと書いてありました。

本作は、記号学で有名なパースという学者の考えを筆者が捉え、筆者の解釈も加え、一冊にまとめた本になります。

タイトルのアブダクションは、演繹・帰納に次ぐ第3の方法ということで記載されており、実際の科学的発見は、アブダクションも使っているということを主張しています。

論理学でいえば、三段論法で有名な演繹のみが厳密なる論理足りうるのですが、これは1行目の前提から3行目の結論まで、ほとんど話が動きません。要は1行目の前提の中に潜在的に書いてあることを述べているのみです。

また、帰納法も、当てずっぽうでいくつか例を考えると、この共通点は真でないことになります。3人の有名人の共通点は、全人類の共通点ではないようにです。また、白鳥は白い、という主張は黒い白鳥の発見でもって偽になってしまう弱さもあります。

そのため、例えばニュートンの万有引力の法則は、りんごが落ちたところから発明されたとされますが、そこから引力の発見というのは、演繹・帰納法では説明できません。そのためにアブダクションがあります。それは、論理を飛ばして仮に〇〇が真とすれば、〇〇といえる、と考えるのです。

論理を飛ばしたところは、後から埋めます。この証明に活躍するのが帰納法です。帰納法は、仮説があってその正しさを証明するために用いると、真である可能性が高まります。むしろ演繹が使えない場合、帰納からのアプローチが最も証明となりうるツールとなります。

アブダクションの過程は2つあり、最初に色々思いつく段階を経て、その後、正しいと思われるものの選別となります。

しかし、この選別を経ると正しい説となるのか、というところについては、人間は、元々、自然について合理的に考え、認識する能力がある、と主張します。ここの部分は苦しいのですが、選択過程においては、①もっともらしさ②検証可能性③単純性を重視せよ、とも記載があり、この観点から考えると、人間の思考能力を信頼して、それを所与の前提とすることも、感覚的には正しいのかな、とは思います。

ここの人間論の記載が出てしまうところに、学問的正確性は欠けてしまうのですが、アブダクションという拡張思考こそ大切である、というのはかなり納得できます。我々は物事の進め方を考えるときに、実際はこうしているのですが、それは何となくやっています。それを文として記載するとアブダクションということになるのだと思います。

人間がどう考えて仮説を思いつき、それを証明して使っていくのか。その過程を明文化した本だと私は捉えました。

だからこそ色々な発想をしてみることが大切なのだと思います。

まだ理解が浅い部分はあろうかと思いますが、勉強させて頂きました!

ありがとうございます。

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲