【書評】「問題解決のジレンマ−イグノランスマネジメント:無知の力−」(細谷功著)〜人間の論理的思考とは何か〜

先日、同著者の「抽象と具体」を読んで、人間の思考構造が明確化されて、感動した私は、次にこちらの、「問題解決のジレンマ−イグノランスマネジメント:無知の力−」にチャレンジしてみました。

ハードカバーの本で300ページ弱という、もはや大作でしたが、読み終えてみると多くの学びがあったと思います。

はじめに

人口知能がどんどん性能を上げていっている現代において、「人間だけができること」を探すことが大切です。

一つには、人口知能は全く融通は利かないものの、聞いたことは完璧にこなす型の優秀な部下なので、上司として上手く指示することで、人間は更に色々なことが短時間でできるということです。

そして、もう一つは、先ほども記載している通り、人口知能は「融通が利かない」という点です。翻っていえば、人間は融通が利くのです。

このように頭を柔らかくして、次々と連想する能力こそ、これからの時代における人間の生き方だと思います。

特に離れたところからアイデアを持っていって連想することが大切です。

とはいえ、そうした連想はどのような考え方をすれば養えるのでしょうか。

その答えが本書にありました。

コンビニにないものは?

「ないもの」を考えてみることの重要性を、本書は強調します。

一言でいえば、ソクラテスの言う、「無知の知」が大切だということです。

しかし、「無知の知」は、ソクラテスがこれを使ってソフィスト達を論破しまくったエピソードは知っていても、その重要性はイマイチよく分かりません。

その大切さが、本書を読むと分かりやすく記載されています。

論理的説明は書籍に譲るとしまして、「コンビニにないもの」を想像してみると分かりやすいです。

最初は、財布とか携帯電話とか、身の回りにあるものでコンビニにないものを想起します。

そこからどこまで想像を膨らませるかが大切だと言うことです。極端な話、助動詞とかも売ってない訳です。

このように、固定観念に囚われず、頭を柔らかく考えることが大切だ、ということです。

頭を柔らかく、というのはよく言われますが、その説明をここまで論理的にしたのは始めてなのではないでしょうか。

知ることの果てに

知識をつけると、そこには終わりがあるのでしょうか。更に道が伸びていく、と本書では解いています。

面白いのは、既知が増えれば未知の部分が減っていくのかといえばむしろ逆で、「知れば知るほど未知の領域は増えていく」のである。アインシュタインは、「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる」という言葉を残している。(67ページ)

いや、実体験を遡ると分かるのですが、終わりがないというのを分かりたくない心がそれを理解するのを無意識に拒否していたのかもしれません。

しかし、このように言葉にされてしまうと、しっかり受け止めないといけないな、と実感します。

皮肉的な人間の「理解」の構造

これは、「抽象と具体」のところでも紹介はされていましたが、より明快に記載されていました。

「なんて皮肉な…」と思いますが、理解されないケースの分析をすると、「なるほどこういうことなのか、、」と納得させられます。

人間は、自分の考え方や思考回路が、例えば動物に比べれば十分抽象的であるのに、いざ自らの理解を超える抽象度の高さで話をされると「わからない」と感じるのである。別の言い方をすれば、自分が抽象的な表現や理解の仕方を身につけてしまうと、逆にいちいち具体的に語ることがばかばかしく思え、むしろその方が難しく思えてくるのである。(226ページ)

この言葉を念頭において具体のやりとりを振り返ると、「伝わらない」もしくは、「よく分からない」の論理の部分の意味合いは抽象レベルの差にあることもそれなりに多いことが分かります。

ただし、人間は感情の生き物なので、感情面も大きいことは忘れてはいけません。論理が伝わらないのではなく、嫌いだから聞く耳を持たない、というケースも現実には多いのです。

アタマの使い方

それでは、頭を柔らかく、といってもどのように頭を使って考えていけばいいのでしょうか。

発想力を活用する上で、注意点が書かれています。

抽象化によって、ビジネスモデルのパターンの切り口と事例のセットを、標準パターン化することができる。これをもとにすればアナロジーが活用しやすくなるが、うまく活用していくためには、「借りてくる」相手の世界と検討の対象として当事者になっている領域との類似点と相違点を適切に見極めることが重要である。(235ページ)

そもそもアイデアとは、既存の情報の組み合わせに過ぎません。そうなると、上記にあるようにアナロジーが大切だ、となり、どの組み合わせが大切なんだ、という話になります。つまり、情報をどこから引っ張っていくかが大切になります。

【参考】

例えば、Netflixの事例を考えると分かりやすいです。これまで、TSUTAYAなど、借りてくるビデオ・DVD界において、ジムが月額制であることの便利さを借りて、業界に革命を起こしています。

この他にも、コメダ珈琲店も、ただコーヒーを売るだけでなく、朝食とセットとすることで、魅力を高める工夫をしています。

「なぜ」の大切さ

よく、なぜ、と聞くことが大切だと言われています。

しかし、なぜ、「なぜを聞くことが大切なのでしょうか」、問われると、「いや、そりゃそうでしょ」という解でない回答を出してしまうと思います。

それに本書は正面から回答しています。

Whatが与えられたときにそれをHowに落とすのが問題解決で、WhyからWhatそのものを導き出すのが問題発見である。(105ページ)

Whyだけが問題発見のための疑問詞で他はすべて問題解決のための疑問詞(250ページ)

「なぜ?」だけが「関係性」という相対的なものであるから、「その先」を探ることができ、従って複数回繰り返すことが可能なのである。しかもこれは繰り返すことでさらに「上位概念」に上っていくから、なぜを繰り返すことで本質に迫り、より優れた問題に定義し直したり、本来解くべき新たな問題を発見することにつながっていくのである。(252ページ)

なぜだけが関係性を見つけるものである、という説明は、結構衝撃を受けました。

なるほど、だからなぜは何度も聞くことが大切なんだ、と気付かされもしました。

トヨタでは5回なぜを聞け、との教えがあるそうですが、大切というのが分かっても、その理由が納得できないと前に進めない私にとっては、かなりの前進でした。

【参考】

おわりに

本当に細谷先生の本は、私の頭をクリアにしてくれます。ぼんやりした理解をクリアにしてくれるような、そんな教えです。

最後に、私の好きなフレーズを紹介します。

「解釈」とは、突き詰めれば「分ける」ことと「つなげる」ことの組み合わせである。(36ページ)

解釈とか難しく考えず、シンプルな要素に分けて、深く考えること。

知ることと考えることの深さを学びました。

この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲