【書評】「うつヌケ−うつトンネルを抜けた人たち−」(田中圭一著)〜うつという病気を知る社会派漫画〜

鬱などの心の病は、健常者にとって見れば、理解されにくい病気です。
それを分かりやすく、漫画の形で伝えたのが同書です。

病気は「予防」が大切です。とはいえ、大半の人は病気になってから気づきます。
そうした意味で、こういう種類の本は貴重で、分かりやすく予防の観点も含めた情報を伝え方をしていると思います。

また、鬱などになりそう、あるいはなった方にどう寄り添うべきか、という話も一部に含まれていて、参考になります。

はじめに

この漫画を読んで一番考えたことは、「うつ病というのは誰にでもなりうる病気である」という点です。

本の中では、うつになりやすい人として、「生真面目」「気は小さいが前向き」「責任感強い」と書いてあるのですが(132ページ)、それは全てではないにせよ、大半の人間は、少なくとも一部にはそうした側面があると思います。

掲載されている多くのパターンは、一度成功したが、その後の周りの期待値が高まり…というエピソードの割合がやや高かったような気がしますが、社会人として生活していれば、そういうエピソードはどこにでも起こりうる話であることが分かります。

本当に、誰にでも起こりうることを実感させられます。

ちなみに、「こういう本は気持ちが重くなるから手を取りたくない・・・」という方も一定数いるかなとは思いますが、フラット・客観的に情報を伝える工夫もされており、読んでいてもあまり重い気持ちにはならず、純粋に知ることのできる本ですので、そこはご安心いただければと思います。

自己洞察

うつになる傾向として、強い自己嫌悪が挙げられます。

しかし、その嫌悪の仕方は、被害妄想に近いもので、現実を客観視できていないことから起きるようです。

そのため、「自分を見つめ直すこと」が大切とのことでした。

具体的には、「日記を書いて、1週間後とかに振り返ると、冷静な目で判断できる」など、日記を書くことを推奨していました。

自分を客観視することは難しいですが、日記等を書くことが、こうしたメンタル面でも重要なことを学びました。

また、家族・パートナーなど周りの支えも大切であるとのことでした。実際に、妻が指摘したから夫のうつ的症状に向かうのを防いだ例もありました。

他人も自分もそうですが、フィードバックを受けて、考えることが大切なことだと理解しました。

自己肯定感

自己洞察と並んでキーワードだと私が考えるのが、「自己肯定感」です。

先述したように、自己嫌悪がひどく行き過ぎ、被害妄想のようになってしまうことが、うつに入ってしまいかねないとのことですので、そうなると、「自分を愛せていない」ことが、そうしたことにつながるという考え方です。

具体の方法も、本に記載があり(13ー14ページ)、

1.ありのままの自分を受け入れよう
2.「−ねばならない」という考えは棄てよう
3.ネガティブな言葉はやめて自分をほめよう
4.心の奥底まで「自分を好き」で満たす

とのことでした。

特に、「朝起きた時に、潜在意識が出ている時に、前向きな発言をすることで、前を見られるようになる」ということを強調しておられました。

日本では、「ナルシスト」という言葉が表すように、「自分のことが好き」ということをどこか軽蔑する向きがあると思います。

「ナルシズム」の話は、ヨーロッパなどでは良いこととして記載されますが、日本ではあまり記載されている例は多くはないと思います。

しかし、そうした動きは、よくないということを本書を読んで強く思いました。「自分が好き」ということを堂々と言ってもいい社会であるべきだと思いました。

また、幼い頃などの気づかないが自然に蓋をしている「トラウマ」もこうした自己嫌悪感に繋がるようです。

私も含め日本人が苦手とする分野であるとは思いますが、「自己開示」というか、しっかり思ったことを伝えることが大切なのだな、と感じました。

パートナーなど、近くにいる人を大切にし、色々なことを話しあっていこうと思いました。

緩急の大切さ

これが私にとっても結構響くところなのですが、「緩急」は本当に大切なんだな、と強く思いました。

本書で「症例」として出ている方は、皆「頑張り過ぎ」ています。無理せず、自分のペースで、成長していけばよい、という考え方が大切のようです。

人間は、別にうつでなくても、100%常にやる気満々という訳ではありません。

そうであるからこそ、気分が落ちた時は、「人生の自習時間」なんだと考えて、自習時間にふさわしい「やるべきこと」を見つけておくことが大切だ、というメッセージが響きました。

ついつい、「無駄な時間」だから「もったいない」と考えてしまうのですが、気分に逆らわないで、その時間にやることを準備しておくということでした。

そして、それに加えて、趣味を持ったりすることで悩みの面積を小さくすることも大切だと言っていました。

趣味とかゆったりする時間とかは、大切であることは知りつつも、ついつい自分を追い込んでしまう時がありますが、鞭を打つのはほどほどに、「心に従う」ことも大切である、ということは大きな学びです。

ゆったりすることも楽しんで、充実した生活を送れるようにできればと思いました。

おわりに

うつに限らないですが、「知っておくこと」「準備すること」は本当に大切だと思います。

まず問題点を知り、その対策を立て、やっていく。こうした準備が大切であることを再認識させられる本です。

180ページ弱で漫画なので、2時間くらいで読めると思います。うつとは無縁だと思っている人も、「私は100%あてはまらない」という人は正直ゼロだと思います。

そうした人々の誤解が多い分野こそ、こうした「伝える」という本の意義を感じます。

参考サイト等

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この記事を書いた人

相羽涼太

相羽涼太

読書、手帳術、旅行記・訪問記・食レポ、ジム(運動、食事)、英語学習などを中心に記事を更新します。

インターネットの登場で、「考える」ことが減りがちな今こそ、自分なりの軸を持って、考え、発信していくことを大切にしたいと考えています。

SF(上位10位、2019年1月現在):慎重さ、収集心、個別化、責任感、自我、指令性、目的志向、自己確信、信念、学習欲

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